クーリエ・ジャポン6月号に「The No-Stats All Star」という翻訳記事が掲載されている。元記事はアメリカのノンフィクション作家マイケル・ルイスが著したものである。題材がNBAなだけあってとても興味深く読めた。マイケル・ルイスと言えば、貧乏球団が数学的手法を取り入れて強豪チームに変貌する姿を描いた「マネー・ボール」で有名だが、そのアナザーストーリーとして「The No-Stats All Star」が語られている。
記事中で取り上げられるのは、ヒューストン・ロケッツのショーン・バティエー選手。名門デューク大学を卒業しNBA入りした選手だが、まわりからは「NBAでぎりぎり通用するレベル」と言われている選手である。スタッツを見れば、得点、リバウンド、シュートブロック、スティール、アシストのどれをとっても見劣りがする。しかし、彼には他の選手にはないおおきな強みがあった。
そこに気付いた男がダリル・モーリーというロケッツのゼネラル・マネージャー。彼は正確なデータ分析でスポーツチームを強くすることこそ、自分の人生でやりたいことだと思っている人物で、まさしくそれを体現…。ということで詳しくは記事を見ていただくとして、単純なスタッツ(得点、リバウンド、アシスト等)で測れない強みの分析(ロケッツでいうところの「プラスマイナス」)がアメリカで進化していると強く感じた。
さてそのNBAだが、ロケッツは現在プレイオフのカンファレンス準決勝でレーカーズと熱戦を繰り広げている。トレーシー・マグレディとヤオ・ミンの2人がケガでいないのは痛いが、今日も勝ちそうな感じ。バティエーも頑張っている。西地区準決勝はこのロケッツ VS レーカーズ、ナゲッツ VS マーべリックス というシリーズだが、ナゲッツがマーべリックスを4-1で蹴散らしてしまった。ビラップスの加入がここまでケミストリーを生み出すとは思わなかったが、非常にアグレッシブなチームであり、見ていて楽しい。この流れはずっと続きそうな予感である。カンファレンス決勝はレーカーズ VS ナゲッツと踏んでいるが、もしかしたらNBAファイナルにはナゲッツが来るかな…?
一方の東地区は早々と優勝候補のキャブスが地区決勝進出を決めた。俺のスーパースターの定義はチームを優勝させるほどの力があるかどうか、であるが、キング・ジェームスはその力が多分にありそうだ。もう1チームはマジックかセルティックス。3-3のタイで最終戦がBOSTONだから、セルティックスに分がありそうだが、マジックもナゲッツ同様の勢いが感じられる。”若さ”とでも言うのだろうか。しかし、決勝であたるキャブスに両者は勝てないだろう。
プレイオフは短期決戦で非常に見応えのあるシリーズ。これまでも幾多のドラマが生まれてきた。当然、今年もブザービーターがあったり、目の覚めるようなダンクがあったりとドキドキが止まらないシリーズになっている。インターネットが進化したおかげで、各試合のハイライトをNBA.COMで見ることができるが、これが昼休みの楽しみとなっている。ハイライトを見ているとちゃんと1試合まるまる見たいと思うようになるが、NHKさん、もっと放映してくださいね。
プレイオフのポイントはスーパースターの真価。去年惜しくも敗れはしたが、コービー・ブライアントとレブロン・ジェームスのプレイは畏敬の念さえ覚えた。あのプレッシャーの中でボールをリムに沈めていくのがスーパースターだ。